天目茶碗 銘 命乞い
(てんもくちゃわん めい いのちごい)
板谷波山(1872 - 1963)
昭和19年(1944)
口径 12.2cm
大正後期より茶道具に取り組んだ板谷波山は、中国南宋時代の天目茶碗など、厳しく美しい形と、気品ある釉色をめざしました。本作は辰砂釉(しんしゃゆう)が窯の中で窯変し、紅色を基調とした、夢幻的な色あいをみせています。波山による箱書はありませんが、それは焼き上がった茶碗が、完璧を求める波山の意に添わなかったからです。窯出しの際に、まさに割られようとしているところを、出光佐三が「命乞い」して求めたことが、佐三自身による箱書から分かります。