列品解説 のココが楽しい!
狩野派に新たな光を当てる、実験的な仕掛け満載の今展。学芸員のわかりやすい「列品解説」で、知られざる狩野派の世界をお楽しみください。(約45分)
午前10時30分~> | 2月13日(木)、2月27日(木)、3月12日(木) |
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午後6時~> | 2月14日(金)、2月28日(金)、3月13日(金) |
※事前の申し込みは不要です(入館料のみ)
※集合場所は展示室1の入口です
狩野派の見方がガラリと変わる!
江戸時代の「狩野派」というと、どんなイメージを思い浮かべますか? 個性を重んじる現代の価値観では、「面白味に欠ける」と評されることもある狩野派の作品。しかし江戸300年を通じて繁栄し続けた絵画世界には、そんな思い込みをはるかに超える奥深さがあります。今回は狩野派を支えた「模写と鑑定」という営みを、様々な角度からクローズアップ! 狩野家の弟子になった気分で、先達の仕事ぶりをのぞいてみませんか?
やっぱり凄い、探幽の模写
展覧会の冒頭を飾るのは、狩野探幽の模写を集めた「臨画帖(りんがじょう)」です。その「眼と手」の凄みを体感できるよう、今展では探幽の模写とオリジナルの絵画をあわせて展示しています。2017年に再発見された雪舟の「倣夏珪山水図」や、伝夏珪筆の「瀑布図」と比較すると、探幽の模写の "特異な性質" が浮き彫りに……。若冲の模写のパネル展示なども織り交ぜながら、狩野派の模写について考えてゆきます。
江戸狩野と京狩野はどう違う?
展覧会の第2章では、江戸狩野と京狩野、2つの狩野派の違いに注目します。江戸狩野の礎を築いた探幽の「叭々鳥・小禽図屏風」は、探幽らしさが発揮された傑作。「臨画帖」のあとでこの作品を見ると、探幽が模写をどう活かしたかがよくわかります。京狩野に属した狩野永納は「探幽によって同家の画風が一変した」と記しました。そこにはどんな思いが込められていたのでしょうか? 正統をめぐる両者の葛藤を見てみましょう。
解剖!! 狩野家の鑑定術
「権威ある鑑定家のお墨付き」となれば、作品の価値がはね上がるのは昔も今も同じです。江戸時代にその役割の一端を担っていたのが、狩野家のトップたち。展覧会の第3章では、狩野家に持ち込まれた絵画とともに、当時の鑑定書を展示するという斬新な試みをしています。ふだん表舞台には出てこない外題や添帖(いわゆる鑑定書)を、じっくり観察できる貴重なチャンス! 日本美術の知らない顔に出会えるかもしれません。
優美な人物像に潜む "違和感"
第4章でご案内するのは、中国絵画に続き、狩野派が新たなレパートリーとした「やまと絵」の世界です。室町時代の美しい「四季花木図屏風」(重要文化財)は、狩野探幽が「土佐光信筆」と鑑定した一作。自身が描いた「源氏物語 賢木・澪標図屏風」では、土佐派にならった優美な表現で楽しませてくれます。ところでこの屏風、よく見ると人物像に "違和感" が……? じつは探幽の「やまと絵」学習のヒントがここに隠されているのです。
「あれ、筆者の名前が違う!?」
会場でそう思われた方は、きっとかなりの美術好き。今展では「当時、狩野家が作品をどう見たか」という事実に光を当てるため、あえて過去の展覧会とは異なる筆者名を記していることがあるからです。そのひとつが、第5章に登場する「竹虎図屏風」。探幽の鑑定を尊重し「周文筆」と記していますが、多くの展覧会ではある巨匠の作とされています。「真贋」にこだわるのは、現代流のひとつの見方。作品の歴史にもっと近づける、もうひとつの見方をご提案します。