列品解説ギャラリートークのココが楽しい!

芭蕉が「奥の細道」の旅に出てから、今年で330年。昔も今も、人を惹きつけてやまない漂泊の旅人・芭蕉の世界を、学芸員がわかりやすい「列品解説」でご案内します。(約45分)

午前10時30分~ 9月5日(木)9月12日(木)9月19日(木)
午後6時~ 9月6日(金)9月13日(金)9月20日(金)

※事前の申し込みは不要です(入館料のみ)
※集合場所は展示室1の入口です

"まじめ" な芭蕉と "ゆかい" な芭蕉

「松尾芭蕉」と聞くと、どんな人物が思い浮かびますか? 展覧会の最初にご覧いただくのは、江戸時代に描かれた芭蕉の肖像です。芭蕉の門人であり、生前の姿を知る小川破笠が捉えたのは、威厳あふれる "まじめ" な姿。一方、与謝蕪村や円山応挙に絵を学んだ松村月溪(のちの呉春)は、どこか "ゆかい" な愛すべき旅人として芭蕉を描いています。あなたのイメージに近いのはどちらでしょうか?

芭蕉の「旅の思い出」ベスト10!

芭蕉が最晩年に、自ら描いたとされる「旅路の画巻」は、今展のハイライトの一つです。山間の宿で過ごす冬の夜、紅葉を眺めながら渡る大河、にぎわう城下町のそぞろ歩き……。希代の旅人が「ベスト10」にあげた思い出のシーンを、ぜひ追体験してみてください。それぞれの場面に芭蕉がどんな句を詠むつもりだったのか、想像してみるのも一興です。

芭蕉が追い求めた書のかたち

名句「ふる池や」の懐紙や短冊をはじめとして、約20点もの貴重な芭蕉の自筆作品がズラリと並ぶ今展。筆勢のある30代から、独特のあたたかみのある筆づかいに到達するまで、筆蹟の変化も目の当たりにすることができます。当時は俗文学とされていた俳諧を、和歌や漢詩のような雅文学へ近づけようと試行錯誤していた芭蕉。どうやらその意識は、彼の書にも表れているようです。

風景はいらない!? 与謝蕪村と「奥の細道」

俳人・画家として活躍した与謝蕪村は芭蕉を敬愛し、若いころに『奥の細道』をたどる旅に出ています。「奥之細道図」(展示は下巻のみ、京都国立博物館蔵、重要文化財)は、そんな蕪村が手がけた超大作。風光明媚な『奥の細道』の舞台を知っているにもかかわらず、じつは蕪村はこの作品で、ほとんど風景を描いていないのです。蕪村が焦点をあてたのは、記憶に残る旅には欠かせない、もう一つの要素でした。

師匠はどっち? 才能あふれる門人たち

「蕉門十哲」と呼ばれる芭蕉の弟子は、それぞれ個性あふれる才人の集団でした。芭蕉の肖像を描いた小川破笠は、超絶繊細で斬新な「小川細工」で知られる漆芸家。森川許六は芭蕉に俳諧を習っていましたが、絵は許六のほうが上手で、芭蕉に絵を教えたと伝えられています。発句画賛「野をよこに」は、『奥の細道』の旅中にしたためられた芭蕉の書に、許六が芭蕉の姿を描き添えたもの。師弟関係のなかで生まれたコラボレーションをお楽しみください。

仙厓も放菴も! 芭蕉の旅に思いを馳せて

芭蕉は多くの門人たちを通して俳諧を広め、その魅力は世に浸透してゆきました。後世は「俳聖」としてあがめられ、芭蕉とその句をテーマとしたさまざまな作品が生み出されてゆきます。「芭蕉の名句の一部になりたい」という蛙の気持ちを詠んだ仙厓の画賛や、ほのぼのとした小杉放菴の芭蕉像もその一つ。山形県の立石寺を描いた放菴の作品からは、芭蕉を包んだ雄大な景色が目にうかぶようです。